今回は、先日の「不登校について知る。」の中で示されていた通信制高校について、紹介していきます。
(写真は本文と関係ありませんが、多様な人がいて、スクーリングの一場面のようですね)
通信制高校とは
通信制高校(高等学校通信教育)とは、主として自宅や学習センターで学ぶことのできる教育で、単位の認定は、添削指導および面接指導(スクーリング)と試験によって行われます。
それぞれについて簡単に述べると、
・添削指導…日頃の学習の成果をレポートで提出します。それを教師が添削し、 生徒に返送する形で指導されます。
・面接指導(スクーリング)…登校し、教師と接しながら指導を受けます。
・試験…添削指導、面接指導、メディアを活用した指導、などの成果から測ります。
このほか、課外授業、部活動、職業体験、海外留学など、各校さまざまなプログラムがあります。
卒業の要件は、3年以上在学し、必要単位数74単位を修得し、30単位時間の特別活動に参加すること、となり、全日制高校と同じく「高卒学歴」となります。
趣旨と背景
通信制高校がつくられた趣旨は、「全日制・定時制の高校に通学することができない青少年に対して、通信の方法により高校教育を受ける機会を与えること」でした。
そのはじまりは、教育基本法が施行された1947年にさかのぼります。
「教育の機会均等を保障しなければいけない」という流れの中、通信教育は生まれました。
通信制高校に詳しく、『通信制高校のすべて:「いつでも、どこでも、だれでも」の教育』の著者である手島純さんによると、このころの生徒は、勤労青少年と一般の成人が主だったそう。当時は全日制高校へ行く人が少なく、高校の通信教育は、仕事をしながら勉強する人たちの教育であったようです。
通信制高校の実態
通信制高校の学校数と生徒数のグラフを以下に紹介します。(引用「高等教育の現場について」)

まず、学校数について。
高校の数自体が減っている中、通信制高校の数は増えつづけています。
特に平成10年以降からの伸びが顕著。
平成30年度で、全体の4.5%にあたる252校ありました。

生徒数も同様で、通信制高校では増加傾向にあります。
同年度で、全体の5.4%にあたる186,502人が通っていました。
ちなみに、通信制高校の入学者を調べたデータによると、不登校を経験したことのある人が半数以上(51〜60%)を占める学校は15.2%、21〜30%と41〜50%が 13.9%、31〜40%は 11.9%となっており、通信制高校の生徒の多くは、不登校を経験している、という実態が見えます。
無職が多い…?卒業後について
進路状況は、各校おおまかに公表しているものの、全体として調査したものはなかなか見当たりません。それでも、以下のグラフから一端は垣間見れるようです。

時代背景はあるものの、昭和57年度と比べると、正社員が大きく減り、その変わり「パート等」、また「無職」が増加していることが分かります。
別の調査でも、「教育機関に在籍するのでもなく、就職するのでもない人」の割合は42.1%となっています。全日制・定時制卒業生では5.6%であることを考えると、 その割合は非常に高くなっています。

通信制高校のメリット・デメリット
通信制高校のメリットとデメリットについては、日本初の通信制高校であるNHK学園高等学校の紹介を引用します。
メリット
・登校日が少なく、自由時間が多い
・通学のストレスからの解放
・自分で自分の学びのスタイルをデザイン
デメリット
・実はたいへんな”自学自習”
・友だちの幅、経験の幅が広がらない
・「進学には不利」というイメージがある
実際、通信制高校の難しさとして、自学自習へのモチベーションを保つこと、と聞きます。
ただ、それさえクリアし、自主的に学習を進められるなら、時間や思考の”余白”を存分に活かせられる強みはあるでしょう。
Society 5.0における通信制高校
文部科学省は、Society 5.0* における学びのあり方、求められる人材像として、以下を挙げています。
* サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会。
▶︎学びのあり方
一斉一律授業の学校 ➡︎(から) 読解力など基盤的な学力を確実に習得させつつ、人の進度や能力、関心に応じた学びの場へ
同一学年集団の学習 ➡︎(から) 同一学年に加え、学習到達度や学習課題等に応じた異年齢・異学年集団での協働学習の拡大
学校の教室での学習 ➡︎(から) 大学、研究機関、企業、NPO、教育文化スポーツ施設等も活用した多様な学習プログラム
▶︎求められる人材像
共通して求められる力: 文章や情報を正確に読み解き対話する力
科学的に思考・吟味し活用する力
価値を見つけ生み出す感性と力、好奇心・探求力
新たな社会を牽引する人材:技術革新や価値創造の源となる飛躍知を発見・
創造する人材
技術革新と社会課題をつなげ、プラットフォームを
創造する人材
様々な分野においてAIやデータの力を最大限活用し
展開できる人材
太字部分に注目すると、通信制高校のメリットと合致しているよう見えます。
多くの通信制高校は、個人で学習を進めていくスタイルですが、レポートを共同で作成したり、オンラインでグループワークを行ったり、海外の学校とつなげたりと、通信制だからこそ可能な学びは多々あります。
通信制高校の中でもユニークな存在感を放つN高等学校では、「IT×グローバル社会を生き抜く”創造力”を身につけ、世界で活躍する人材を育成する」と掲げています。
単位認定授業であるベーシックプログラムに加え、”将来へつながる”アドバンスドプログラムを設け、大学受験対策にかぎらず、専門家や企業による多彩な授業を提供しています。
通信制高校も日進月歩で進んでいる、むしろ周りの変化に対応する柔軟性は、より高いかもしれません。
そして、101カレッジ。
101カレッジの対象者は「高校卒業済みの25歳以下の方」ですが、高校卒業資格の取得をサポートできるよう「精華学園 アイランド校」の校舎を併設する予定です(現在、開校に向け準備中)。
アイランド校の卒業後は、そのまま101カレッジへの入学が可能なほか、「ダブルスクール」として3年間ですべての過程(アイランド校と101カレッジ)を修了することもできます。(詳しくはこちらをご覧ください)
Society 5.0だろうと6.0になろうと、いつの時代も、大前提には「自分の軸を持ち、自身の人生を生ききること」があるでしょう。
その学びは、結局は自身で探っていくしかありません。
ただ、その歩みをともにする場であったら良いな、と思っています。
Shall we? ☺︎
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